時々来院するのが異物を食べてしまった犬です。
先日、「犬のパピヨンがパンストを食べてしまったんです！」との電話が来ました。小さな犬がどうしてパンストを食べたのだろうと不思議に思いましたが、とにかく来てもらいました。まず薬を静脈注射して、次に嘔吐する薬液を強制経口投与すると、すぐに嘔吐を始めました。長径20cmくらの大きさの膿盆が一杯になるほど、１０回ほどゲーゲーと嘔吐しました。出ました。なんとパンストのような生地でできた靴下でした。あわててしまった飼い主さんがまちがってパンストと言うものですから、これは大物を飲み込んで大変だと心配しましたが、靴下なので難なく嘔吐で出てきました。犬はゼーゼーして苦しそうでしたが、嘔吐した後はケロッとして帰っていきました。洗濯機から洗濯物を取り出してカゴに入れている時に、犬が食べてしまったそうです。

　ほかにコートの襟に付いているファーという合成の毛皮を飲み込んだ犬、石鹸を食べた犬、焼き鳥の骨付き肉を食べた犬などいろいろです。これらを犬がくわえている時に飼い主が「コラー」などと怒って大声をかけると、あわてて飲み込んでしまうようです。こんな時は落ち着いて犬に接近し、犬の口からやさしく取り出して下さい。

　犬のお腹に寄生虫がいると草や石を食べたりします。きっとお腹がムカムカするからだろうと思います。その時は、動物病院で駆虫薬を投与してもらって下さい。しかし猫が草を食べるのは嘔吐して毛玉を吐き出すための知恵と言われており、全く問題ありません。

　牛は特に金物が大好きです。木の柵に打ち込んである釘などをザラザラの舌でなめて抜き、飲み込んでしまいます。時々胃の中の釘が胃壁を突き破り、心臓に刺さって心嚢炎を起こします。その予防のため、牛には大人の中指くらいの棒状の磁石を飲み込ませておきます。そうすると釘が磁石にくっついてしまい、胃壁に刺さるようなことはありません。牛に磁石を飲み込ませる時は口を上向きにし、30cmくらいの長さの塩化ビニルの水道管を口に突っ込みます。次に水道管の中に磁石を落とすと、牛はコクンと飲み込みます。磁石の投与はとても簡単です。

　なお猫が異物を食べて来院することはほとんどありません。これは猫が用心深くて、犬のような早食い丸飲みをしないからだと思われます。